こじらせ男子の橘くんはワケありでした。


「じゃ、俺行きますね。」


─え、行っちゃうんだ。


─って何を期待してるんだ私。


「あ、はい。ありがとうございました!」


そう言って笑いかけると、

男は少し戸惑った様子で軽い会釈をして

去っていった。


─あ、名前聞かなかったな。


そんなことを思いながら、

私も帰路につく。


悲しみでいっぱいだったのに、

さっきの出来事で

少し頭が冷静になった。

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