心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
遼との出会い
その色とりどりの花たちを眺めていると、花の並ぶワゴンの向こう側に、すらりと背の高い男性が立ち止まった。目が合った。

ちょっと照れ臭そうにこちらを見つめるその彼は、紗知子より少し年下に見えた。ヘーゼルブラウンの柔らかそうな髪。透き通るような茶色い瞳。

まるで陽だまりみたいな温かさで、紗知子を見てにっこりとほほ笑んだ。

「ラナンキュラス、きれいですね。買わないんですか。ずっとここで見てるみたいだけど」

彼が言う。声までが、頬を撫でる風のように優しい。

「はい。欲しいけど今日は無理なんです」

紗知子は両手のエコバッグを掲げて見せた。洗面所の替えの電球やティッシュペーパー。すでに買い込んだ荷物で、両手がいっぱいに塞がれている。

「近所ですか?僕運びますよ」

そう言って、オレンジとピンクのグラデーションに彩られたひと鉢を選び取る。

「あなたにはこの色が似合う」
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