心臓外科医になって帰ってきた幼馴染の甘くて熱い包囲網
クローバーの記憶
───もしかして動画サイトでコメントをくれる「Ryoさん」は遼さん?

だとすれば、遼はずっと前から自分を見守ってくれていたことになる。

どんなに再生回数が少ないときも、批判的な言葉が書き込まれても、いつも優しく励まし続けてくれたRyoさんは、あの、茶色い柔らかそうな髪をした、優しい微笑みを浮かべて見せるあの遼なのではないか。


紗知子はベッドから降りた。

遼に確かめたいと思った。前から自分を知っていたとしたら、いつ、どこで出会っていたのだろう。

クローバー畑の幼いころの記憶の中にすでに、遼が存在していた気がして、いてもたってもいられなくなった。

パジャマの上にコートを羽織った。絵画教室までは歩いて行かれる距離だ。

時間は遅いがきっと遼も紗知子の容態を気にしているはずだから、無事を知らせるためにも絵画教室へ行ってみようと思った。
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