恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Final Spot チャペル・Gardenia

翌週水曜日、『ベリが丘びより』編集部。

「いやー、まさか市長の婚約者が江田だったとはなー」
ニヤニヤとしている梅島編集長の前で、胡桃はバツの悪そうな顔をしている。

副市長逮捕の話題は、土曜のうちにベリが丘中に広まった。
その流れで市長の婚約者が拉致されたことも市民の知るところとなり、一部の人間には段々とそれが胡桃だということもバレていった。

「どこで〝美女で英語ペラペラ〟なんてことになったんだろうな」
「あはは。噂なんていい加減ですからねー」
胡桃はまた、乾いた笑いを浮かべる。

「市長の新婚特集でもするか? 江田と一緒にインタビュー」
胡桃は首をぶんぶんと横に振る。

「絶っ対に嫌です! 誰も読みたくないですよ、そんなの」

***

その日の夜、壱世のマンション。

「編集長はずっとそんな調子だし、取材先の人にもいろいろ言われて大変だったんですよ」
ソファに座った胡桃がスマホを見ながら口を尖らせる。

「それに、商店街の人たちなんて『胡桃を選ぶなんて、懐が深いなー』『くーちゃんがあの栗須市長と結婚なんて奇跡ね』とか、言いたい放題」

「だいたい誰が言ったかわかるな」
壱世は苦笑いだ。
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