恋する星
1話 幼なじみ、真希
ぴぴぴ…ぴぴぴ…
もう、何度目かの、目覚ましを止めて、起き上がる。
ん⁈は、8時⁈
まだ、7時半くらいだと思ってたんだけど…
あと、少なくとも、10分で出ないと普通に遅刻じゃん‼︎
朝ごはんは、学校で食べるとして、とりあえず、制服を速攻で着なくちゃ‼︎
この物語の初っ端から、遅刻をしている彼女は、主人公、佐藤あかねである。
昨晩、「全国UFO特集」を読んでいたことによる、寝不足が効いたようである。
他の人に言ったら引かれると思い誰にも言っていないが、あかねはSF好きだ。
月刊ムーの愛読者という少し変わった女子高生である。
見た目は、人目を引くようなかわいらしさのある顔立ちなので、誰もあかねに実はそんな趣味があるとは思わないだろう。
髪ははねまくり、制服のボタン求めずに、玄関のドアを開け、学校に向かう。
うーん、8時12分。走れば間に合う!
やっぱり、昨日夜更かししなきゃよかった‼︎
タイムマシーンがあれば、いいのにな…
学校の階段を全力ダッシュし、予鈴ギリギリクラスに入る。(ほぼ、飛び込んでいる。)
ふー…セーフ…
息を整えながら、席に着き座ろうとした時には、朝礼がはじまり、すぐに起立しなければならなかった。
「よお、あかね、朝から、髪がはねまくってんな」
隣の席から、からかってくるこの彼は幼なじみの
北川真希(まき)だ。
「メドゥーサそっくりじゃんか」
と、ケラケラと笑う。
メドゥーサ…
あかねは、少しショックを受ける。
真希を石にしてやろうか…とひっそり考える。
それに、今、朝礼中だよ?
とは思いつつ、つい言い返してしまう。
「ちょ、ちょっと朝、時間がなかったの」
10分で準備を済ませたのが、「ちょっと」時間が足りないではないと感じるが。
昔は、もうちょい可愛げあったんだけどなぁ…
あかねちゃーんと言って捕まえたクワガタを見せてくれた夏の日…
あの頃は、まだ、小学1年生だったから…
もう10年近く前か…時が過ぎるのは、はやい。いや早過ぎるよ‼︎
クワガタを持っていたあの頃の手とは比較ならないほど大きくて骨ばった真希の手を見て、あかねは思った。
真希は、いちいち、あかねが制服のボタンの掛け違いやら、前髪の割れやらをからかってくる。
真希はいつも、髪を綺麗にセットし、制服を着こなしているので言い返すに言い返せない。
それだけなら、まだいいのだが…(よくはないが)
「この前の数学のテスト、欠点で補習受けることになったってほんと?そんなに、あのテスト難しくなかったくない?」
「う…」
そう、真希はとことん、あかねをからかってくるのだ。
「だから、今日の放課後…」
「はい、そこ朝礼中に話しない‼︎」
担任のなおちゃんに注意されてしまった。
う…真希が挑発してくるから…
しかし、真希の挑発にのってしまった私も悪い。反省。
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朝礼後。
しかし、さっき真希は何を言いかけたんだろ…
ちょっと気になるので聞いてみる。
「さっき、何言いかけたの?」
「いや、やっぱ、なんでもない」
真希の整った顔が少し赤くなっている。
「言いかけたんなら、言ってよ」
「ほんとに何でもないです…」
急な敬語。そして、目を合わせようとしない。
なんだ、コイツ。
朝からからかってくるし、いいかけてやめるし、顔を赤くしたり…
「次は移動教室だって」
次の授業の教科書を腕に抱えた彼女は、中学からの親友のみつき。
ピンクのリップが似合う可愛い系の子だ。
くるんと丁寧に内巻きにした髪が綺麗だ。
「あ、ごめん、ちょっと待って」
「 そういえば、今日、うちのクラスに転校生が来るらしいって話だったけど、まだ来ないね」
「え、全然知らなかった…」
「うん、この前、ちょっと職員室で盗み聞きしたの」
「わお」
意外とみつきはちゃっかりしている。
「明日来るのかな…」
転校生が、超能力者とか、時空旅行者だったらおもしろいんだけどなぁ…
すでに、あかねの頭はSFにぶっ飛んでいた。
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