優しい愛で溶かされて
「えっ、」
私の隣に座っていた去年入社の新卒の女の子・山路 類(ヤマジ ルイ)さんが、嫌そうにそう声を漏らした。
「山路ぃ、お前1番下っ端だろ〜上司の言うことが聞けないのかっ!」
最悪の状態だ。泥酔した課長の悪い酔癖が出ている。私もよくこんなふうに絡まれていたから山路さんの気持ちが痛いほどわかる。
周りの同僚たちは止めてくれない。皆薄らと同情はしているのだろうけど、飲み会は仕事の場でもあるから、課長に注意できないのだろう。
山路さんを一瞥すると、心底嫌そうに顔を歪めているのが見えた。アルコールが苦手なのだろうか。まだ入って1年程度の若い子にこんな辛い思いさせてしまっていいのか。なんだか当時の自分と被ってしまって、気づいたら私はその場に立ち上がっていた。
「課長、私飲みたいです」
山路さんに集まっていた視線が私へと移る。
飲みたいわけがない、私もアルコールが苦手だ。普段飲むことは全くと言っていいほどない。
「おー珍しいなーいいぞーお前が飲め飲め」
手渡されたのは淵いっぱいに注がれたジョッキビール。
なんの罰ゲームなのよーーー……!!
そう叫びたくなる気持ちを押さえ込み、私は固く目を瞑ったままジョッキに口を付けた。
ビールの苦味が一気に口の中を支配する。
私、バカなことしてるな。でも、山路さんにこんな事させたくないし。
そんな事を考えている最中、頭がクラクラとし始めた。
と、その矢先。