ふたりだけの世界で、本物の愛を。
あれから走り続け、たどり着いた場所は商店街だった。
……全く、今日一日、何やってるんだろう、わたし。
「すいません」
不意にそんな声が聞こえて、わたしは振り向くと50歳くらいのおじさんが立っていた。手には、缶ビールを持っている。
「学校帰りですか? それとも、何かのコスプレ衣装? 可愛い制服ですねー」
おじさんは、わたしの上半身から下半身までじろじろと見つめながら言った。
「これから、もうお帰りでしょうか? 時間あります?」
「あのっ……」
「今から、お茶でも飲みに行きませんか? 少し歩くことになるけど、できたばかりのカフェがあるようですよ。僕が全部お金払いますから」
なんで、このおじさん、わたしにこう言ってくるの?
やっぱり、わたしが騙されそうな見た目だからなの?
誰かがいてくれればいいのに、と一瞬でも思ってしまった自分が嫌だ。
学校からも翔ちゃんからも逃げて、そんなわたしが助けてもらう資格なんかあるわけないのに。
「それはっ……」
「少しだけでいいんです」
「あの! わたし、友達とあそこで待ち合わせしてるから失礼します!」
わたしは、そう叫んでから反対方向に向かって走り去った。
……疲れた。
なんで今日1日でこんなに走らなきゃいけないんだろう。