望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
 史輝の運転する車で、父が眠る墓地に向かう。

 海から近いその墓地は小高い丘の上にあり、海風が墓地の周りの樹を揺らしていた。

 光が下りる緑の芝の上に白い墓石が並ぶ、明るく安らかな気持ちにさせてくれる。

 美紅は父の墓石の前に立ち、持って来た花を添えた。

 母の妊娠が分かったのは、父が亡くなった後だったから、父は自分に娘がいることを知らずにこの世を去った。

 美紅も父の顔を知らず、少し前まで名前すら知らなかった。

 籍も入っていない。世間的にも認められていない関係。

 それでも墓石の名前を見たとき切なくなった。

 美紅はそっとその場に膝を突いた。

 ようやく会えた父に、祈りを捧げる。

(お父さん、安らかに眠ってください)

 史輝が美紅と同じように屈みこむ。一緒に祈ってくれているのだろう。

(お父さん、私の夫の史輝くんと、初めてできた友人の明日香さんです。私は今、幸せに生きてます)

 この声が届いたらいいのに。そう願いながら美紅は父に語り掛けた。


「史輝くん、今日はお墓参りに連れて行ってくれてありがとう」

 寝る前の夫婦の時間。美紅は史輝に改めてお礼を言った。

「お父さんに会えて嬉しかった」

「また連れていく。美紅がよかったらお義母さんを同じ墓地に連れて来ようか」

「そうだね……お母さんもその方が喜ぶかもしれない」

 母は今、笛吹家の墓地に眠っているけれど、きっと愛する人の側にいたいと思っているだろう。

「史輝くん……今日、私は幸せ者だと思ったの」

「どうしてだ?」

 史輝が優しく続きを促す。

「初恋の人と結婚して子供ができて、この先もずっと一緒に生きていけるから……史輝くんと会えて本当によかった」

「俺も美紅に会えてよかった。大切にしたいと思う人がいるから、苦しいときもここまでやって来られたのだと思う。愛してる」

 彼の手が背中に回る。温かな腕に包まれて顔を上げると唇を塞がれ、美紅は幸せの中で目を閉じた。

 この愛しさが永遠に続くことを願いながら。

 END
< 195 / 195 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:498

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

あなたとは合わないと思っていたけれど

総文字数/112,322

恋愛(オフィスラブ)171ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
西條香澄 28歳 航空会社調達部勤務 × 天谷武流 31歳 将来有望な副操縦士 価値観が合わないふたりが、それぞれの事情のために契約結婚を。 お互い干渉し合わないようにつもりだったけれど、一緒に生活をしているうちに、意外と気が合うのが分かり…… ◇加筆修正(特に後半)したものがベリーズ文庫2月刊で発売予定です。よろしくお願いいたします。
失恋したので復讐します
  • 書籍化作品

総文字数/108,494

恋愛(その他)64ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
山岸千尋はある日社内恋愛中の恋人に手ひどく振られて失恋してしまう。 落ち込んでいるときに「一緒に復讐しない?」と誘ってきたのは、いつもクールで毒舌な同僚だった。 ※ベリーズ文庫2025年10月刊で書籍化予定の作品です。 書籍版とは内容と結末が異なります。ご了承ください。
無口な脳外科医の旦那様、心の声(なぜか激甘)が漏れてます!
  • 書籍化作品
表紙を見る 表紙を閉じる
お見合い結婚してあと少しで一年なのに初夜もまだの仮面夫婦なふたり。 関係改善に努めていた羽菜は、ついに見切りをつけて離婚を夫に告げる。 ところが離婚を喜ぶはずの夫が断固拒否する。 なんとか頑張る羽菜はあるきっかけで夫の本音を知ることになり…… 加賀谷羽菜 資産家の娘で現在は主婦 加賀谷克樹 クールで無口な脳外科医  ※ベリーズ文庫2025年6月刊で書籍化予定の作品ですがこちらは改稿する前の原稿になります。 書籍版とは(後半の)内容が異なります。ご了承ください。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop