京極家の花嫁〜財閥御曹司の秘めた愛〜

「えっと、しきくん?」
「どうした?」
「ママたちは、だいじなお話があるんでしょう?」
「そうだよ」
「みくたちはどこに行くの?」

首を傾げると、史輝が庭の更に奥を指さした。

「向こうの木の枝に、鳥が巣をつくってるんだ。美紅ちゃんに見せてあげたくて」
「ほんとうに? みく、鳥すきなんだ」
「よかった……ほら美紅ちゃん、あそこだよ」
「わあ、すごい!」

史輝が示す先では、青い鳥が二羽、優雅に飛んでいた。美紅がはじめて見る鳥だった。

夢中になってその様子を眺めている間、史輝はずっと側についている。

気が済むまで観察した後は、近くのベンチに座って、おしゃべりをした。

「しきくんは何才なの?」
「十才だよ。美紅ちゃんは五才だったかな?」
「うん。このまえ五才になったよ。ほいくえんに通ってるの。でも今日はママとお出かけだから休みなんだ」

美紅は嬉しくてつい笑いそうになる口を小さな手で押さえた。

今日はいつも忙しい母との外出だから、すごくウキウキしているのだ。
生まれたときから父親がいない美紅にとって、母がすべてだから。
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