京極家の花嫁〜財閥御曹司の秘めた愛〜
一章 京極家の花嫁


 
その知らせは、笛吹美紅にとって青天の霹靂だった。

「私が……史輝さんの結婚相手に選ばれたのですか?」

京極史輝は旧財閥、京極グループの御曹司で次期総帥だ。

京極グループは、京極銀行を頂点として国内外に数多くの企業を抱えてる日本最大の企業グループであり、中核企業十二社のトップは、京極家から枝分かれした分家が務めている。

本家と分家の間には明確な序列があるが、本家当主の妻は分家の女性から選ぶのが慣例だ。

笛吹家は分家の中でもとくに有力な家だから、次期総帥である史輝の妻に選ばれても不思議はない。

ただ、美紅は笛吹家当主の娘ではなく姪だ。

十三年前、美紅が十才のときに母が事故で亡くなった際に、引き取られたのだ。

と言っても快く受け入れて貰った訳ではない。
母は未婚で美紅を産んだので父親がいなかった。他に面倒を見る大人がいなかったから渋々だった。

伯父は勝手に家を出て父親が誰かも分からない子供を産んだ美紅の母を軽蔑していたし、美紅のことも疎ましく思っている。

笛吹の姓を名乗ることも不快に感じているとはっきり言うほど険悪な関係だった。

だから同居してからも、家族として扱ってもらったことは一度も無い。
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