幸先輩が甘く迫ってくるのですが。
「っほんとです!もうっ、いいからさっさと交換しちゃいましょ!」
私もバッグからスマホを取り出してそう促した。
どっちがQRコードを出すとか読み込むとかのあるあるなやり取りをし終えたあと。
「バイバイ、ひなみちゃん。また連絡するね」
手をひらひらと振り、幸先輩は学校に向かっていった。
私も手を振り返しながら小さく息を吐く。
なんかどっと疲れた…。
まさか朝から幸先輩と会うなんて想定外。
しかもその上、連絡先まで交換しちゃったし。
あんなに幸先輩のことを知りたいって思ってたのに、もうおなかいっぱい。
…そういえば先輩「また連絡する」とか言ってなかった…?
その後ろ姿をボケーッと眺めていたら余計なことを思い出してしまい、ふらりとめまいが襲う。
あぁ…神様。
どうか、昨日の放課後に時をお戻し下さい。
そして、私の口を塞いでください。
幸先輩と出会う前の、平穏な日常が恋しいです。
「なんで知り合っちゃったかなぁ…」
桜の花びらが舞う出会いと別れの季節。
厄介な先輩に出会ってしまったと思わざるを得なかった。