りつとるね
♪♪♪

そして、我がクラスの番。
指揮者が指揮棒を上げると、客席が異様にしーんとなった。

ーー原因は私? そうだよね。この前弾けなかったんだもん。
心配してくれてるの?
それとも、どうなるか見てやろうっていう興味本位?
見てなさい。こっちは律に特訓受けたのよ。2度と同じ失敗はするもんですか。

私は意を決して弾き始め、のめりこんだ。
緊張する暇も、客席の反応を気にする暇もないくらいに。

指はスルスルっと思うように動くし、音はのびやかに奥深く響く。
そして、律が作ってくれた超絶ソロ♬♬♬♬♬~
「お“―」という声にならない客席からのどよめきが一瞬聞こえたけど、私は最後まで集中した。

アドレナリンやセロトニンが大量放出されて、この瞬間がずっと続けばいい!と思った。
やがて合唱が終わり、ついに曲を弾ききる。

と、一瞬の静寂の後、耳に猛烈な音量の拍手と絶賛が飛び込んできた。
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