そんなの、嘘。
第二章
第一話
地元に帰って来た。
普段離れた場所に暮らしていると、地元の空気に匂いがある気がする。
駅を出てすぐ、深い緑の匂いを胸いっぱいに吸い込んで。
帰って来たことを実感した。
駅から実家まで、散歩気分で歩いて帰る。
昔はあったはずの本屋が閉店していたり。
知らないパン屋が開店していたり。
町の様子は変わっていた。
『右に曲がって 小島旅館』
実家の旅館の看板が見える。
ちょっとだけ速足になって、角を右に曲がった。
「ただいま〜」
旅館の玄関とは別の、住居の玄関をカラカラと開けると、パタパタと足音が近づいて来た。
「おかえりー!」
母が嬉しそうな表情で迎えてくれた。
「なんだ、言ってくれれば迎えに行ったのに」
と、廊下の向こうから兄もやって来た。
「いいよ、大丈夫。あれ?父さんは?」
「旅館のほう。オレもすぐ手伝いに行くから」
「ふぅーん」
と、玄関の三和土から靴を脱いで上がろうとしたら。
バチッ!!!
「えっ!?何!?」