片恋 好きな人には好きな人がいる


その瞳からは静かに涙が頬を伝っている。


涙で濡れる瞳から俺は目が離せなかった。



心臓が凄い勢いでざわざわと音を立て始めていく、胸の奥から熱い何かが凄い勢いで広がっていく。


何だよこれ…。


「俺なら立花を泣かせない」


ん?俺は、今、何を思ったんだ?
何を考えている?
そんな馬鹿な言葉が頭を過ると、勝手に足が動いていた。


「おい」


立花に声をかけると、ビクッと身体を震わせたが気にせず、手を掴むと強引に引っ張って走り出していた。
後ろで立花が何かを言っていた気がするけど、今はとにかくこの場から離したかった。

触れている手から、熱が広がり身体中が熱くなるのを感じる。
走ってるせいか、それとも別の理由か、鼓動が早くなる。

この手をずっと握っていたいと思ってしまった。
そんなの立花にとっては迷惑でしかないのに。

どこへ向かっているのか自分でもよく分からなかったが、校舎から少し離れた開けた場所で立ち止まった。
< 14 / 64 >

この作品をシェア

pagetop