和歌を詠む
「和歌を考えています」
 キヨシは、素っ気なく言った。
 しかし、それは振りであって、本当は、ドキドキしていた。
 「ふーん」
 素っ気なく言ったつもりだったが、内心、もっと話をしたいと思っていた。
 「まあ」
 「私、和歌って、詠めないです」
 さらりと言った、ミユキは。
 「うん」と言った。
  桃太郎電鉄以外のゲームをしないキヨシは、今日は、どんな和歌を詠もうか考えていた。
  和歌に興味がないと言われて少し、凹んでいた。
  だが、和歌なんて人気はないと分かっていた。
 学生時代、短歌サークルの部長だったが、部員は、3人しかいなかった。歌会以外は、ゲームをするか、アイドルの握手会へ行っていた。
 または、部員のタカシと、「あのアダルトサイトが良かった」としか言えなかった。
 ミユキは、横で、そっとキヨシに視線をやったが、何を考えているのか分からなかった。
「変な男だな」と思っていた。
 しかし、本当は、ミユキは、芸能人で言えば松本潤みたいな顔立ちの彼が、気になっていた。
「この人は、どんな人だろう」と思っていた。
 ミユキは、声優の内田真礼に似ている。だが、キヨシは、その美貌ゆえにか、誘えなかった。また、サッカーの本田圭佑選手が好きなのも知っていたが、それを、どう伝えるか、分からなかった。
 
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