友達が結構重たいやつだった

龍二が好き

 有給消化に入るため3月の途中で出社最終日をむかえた。といっても、腫れ物扱いされていた私には別れを惜しむ相手はほぼいない。書類の受け渡しを済ませて早々に会社を去った。

「愛海、お疲れ様でした」

 会社を出たところで龍二が花束を持って待っていてくれた。元々迎えに来てくれる予定ではあったけど、花束は予想外。不意打ちに驚いて目に涙がたまった。

「ちょっとやだ!化粧が崩れちゃうじゃん!」

「愛海の泣き顔はレアだね!花束用意した甲斐があったな」

 2年間、正直あまりいい思い出はない。でも龍二のおかげで最後の記憶が素敵なものになった気がする。

「龍二、ありがとう」

「最後だし、また信州蕎麦でも食べますか?」

「うん!そうする!」

 引っ越しは身の回りのものを運ぶだけでいいと言われ、大きな家具や家電は全て業者に引き取ってもらうことになっていた。その手配も対応も全部龍二がしてくれたので、今日はこのまま新居に向かう予定だ。

「‥‥‥‥え?」

 案内されて到着した新居は、思ってた感じとはかなり相違のあるものだった。

「え?ここって賃貸?え?まさか分譲じゃないよね?」

 さっきから龍二と目が合わない気がするのは勘違いだろうか?

「え?部屋がいくつあるの?てか家具が立派過ぎない?うわ!テレビでかっ!何ここ?モデルルームじゃないの!?」

 どうやら龍二は家に関するほぼ全てを母親に丸投げしたらしい。その結果、彼女は駅近の高級分譲マンションをポンと購入し、内装は知り合いのインテリアデザイナーに任せたそうだ。

 家具も家電もいらないと言われた時にちょっと嫌な予感はしてたよ‥‥でもここまでとは思わなかった。

「これ‥‥全部でいくらかかってるの?」

 当然彼は把握していない。ここにきてどうしようもないレベルで金銭感覚の違いがあることが浮き彫りになった感じだ。

 こんな本気の部屋を見せつけられたら嫌でも結婚の二文字がちらつくな‥‥いや違う、彼らは最初に会った時から結婚に本気だったわ。

「うわー‥‥‥‥」

 よくよく見たら例の有名な結婚情報誌が本棚に並んでますわ‥‥凄いな‥‥逃げきれる気が全くしない。この感じだと私は近々龍二と結婚することになるだろう。でも別にそれでいい‥‥違うな、それがいい‥‥かな?

 龍二が運命の人かはよくわからない。だけど龍二は私が大好きで、私も龍二が大好きで。多分他は必要ない。この気持ちがずっと続くといいなと思う。私達ならきっと大丈夫だ。

 (完)
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