かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~

ファッションセンスが壊滅的

「西原さん、またこれからの季節のものを見繕ってくれ」
「由井様、いらっしゃいませ。もちろんです。それではこちらにどうぞ」
 西原望晴(みはる)の働くブティックG.rowの閉店間際にやってきたのは由井拓斗だった。
(相変わらず、綺麗な顔。目の保養だわ)
 望晴は拓斗の顔を失礼にならない程度に、そっと見た。
 三十一歳にしてIT企業の社長。冷たく見えるほど整った顔立ちに、モデルのような体型。

 ――でも、この人は大丈夫。私が怖いと思う男の人じゃない。

 拓斗とはもう二年の付き合いだ。
 ただの客と店員として。
 彼は仕事以外のことには驚くほど無頓着で、必要以上に踏み込んでこないどころか、常に時間を惜しんで買い物も最小限で済ませようとする人だ。
 せっかちな拓斗は、前髪も襟足も長めな髪型がオシャレに見えるが、実際は、美容院に行くのが面倒なだけ。服も上から下まで、望晴の選んだこの店のブランド品を着ているだけだ。
 そんな彼とかりそめとはいえ結婚することになるとは、その時の望晴は夢にも思っていなかった。
 しかも、その結婚が、思いのほか甘いものになるなんて――


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