かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
「それで、由井社長との同棲は順調なのか?」
望晴が閉店準備をしていると、店長の啓介が聞いてきた。
拓斗の部屋に居候してから二週間ほど経つ。
「同棲じゃなくて、同居です! おかげさまで、なにごともありませんよ。顔を合わす時間も少ないですし」
当初、拓斗が言った通り、彼は平日はほとんど家にいないし、土日は望晴が仕事で、休みも重ならないので、朝以外やり取りはほとんどない。
拓斗は初日は九時に帰ってきたものの、その後は十一時すぎだったり、深夜を回ったりと遅かった。
それでも彼は自分で食事を温めて、いつも残さず食べてくれた。
(あんなに遅くに夕食をとるほうが身体に悪そうだけど……)
せめて栄養があって、消化に良いものを心がけることにした。
気になるのはそれくらいで、拓斗との生活は快適だった。
望晴の反応に啓介は笑顔でうなずく。
「それはよかった。最初は驚いたけど、そこまで回復したなら、もう安心だな」
「不思議なくらい、なんのストレスもなくて」
心配してくれる啓介に、望晴は笑みを向けた。
異性と普通に生活できるようにまでなった自分を喜ばしく思う。
「いっそ、そのまま結婚してしまえばいいじゃないか」
「だから、由井さんとはそういう関係じゃないんです!」
からかう啓介に、望晴はきっぱり否定した。
彼との関係を勘ぐられるのは拓斗に申し訳ないと思ったからだ。
家探しをしたいのだが、審査に時間がかかり、火災保険が下りるのは少し先になるということで、しばらく拓斗のところに身を寄せることになっている。
保険金が出る前に、引っ越しするのはきつかったから、拓斗の好意には感謝しかない。
一見クールな印象の彼はとんでもなく面倒見がいいようだ。
本人は気になっていることを放置するのは気持ちが悪いと言っていたが、そう感じること自体、人がいいのだと思う。
「でも、あんなセキュリティばっちりだったら、もうストーカーに狙われても大丈夫だな」
「やめてくださいよ、縁起でもない」
望晴は顔をしかめた。
啓介は望晴が大学を中退せざるを得なくなったストーカーのことを言っているのだ。
やたらと望晴を拓斗とくっつけようとしてくる啓介は、彼なりに彼女の将来を案じているのだろう。
大学の同級生にストーカーされた結果、彼女は不安障害になったのだ。
学校に通えないどころか、男性まで怖くなってしまった。特に、若い男性に対しては、恐怖心から声が出なくなった。
幸い、心理カウンセリングを受けるうちに、日常生活に支障がないくらい回復したけれど。
『東京に店を出すから、そこで働いてみないか』
従兄の啓介が声をかけてくれたのはそんな時だった。
ストーカーから遠く離れた東京なら安心できると思ったし、いつまでも親のすねをかじっているわけにはいかないと、望晴はそれを受けたのだ。
結果は大正解で、めきめきと元気になり、彼女は本来の調子を取り戻した。
それでも、男性恐怖症は完全には治っていなかったが。
「悪い。思い出させてしまって」
瞳を翳らせた望晴を見て、啓介が謝る。
「大丈夫です」
嫌な記憶を振り払うように、望晴はかぶりを振った。
望晴が閉店準備をしていると、店長の啓介が聞いてきた。
拓斗の部屋に居候してから二週間ほど経つ。
「同棲じゃなくて、同居です! おかげさまで、なにごともありませんよ。顔を合わす時間も少ないですし」
当初、拓斗が言った通り、彼は平日はほとんど家にいないし、土日は望晴が仕事で、休みも重ならないので、朝以外やり取りはほとんどない。
拓斗は初日は九時に帰ってきたものの、その後は十一時すぎだったり、深夜を回ったりと遅かった。
それでも彼は自分で食事を温めて、いつも残さず食べてくれた。
(あんなに遅くに夕食をとるほうが身体に悪そうだけど……)
せめて栄養があって、消化に良いものを心がけることにした。
気になるのはそれくらいで、拓斗との生活は快適だった。
望晴の反応に啓介は笑顔でうなずく。
「それはよかった。最初は驚いたけど、そこまで回復したなら、もう安心だな」
「不思議なくらい、なんのストレスもなくて」
心配してくれる啓介に、望晴は笑みを向けた。
異性と普通に生活できるようにまでなった自分を喜ばしく思う。
「いっそ、そのまま結婚してしまえばいいじゃないか」
「だから、由井さんとはそういう関係じゃないんです!」
からかう啓介に、望晴はきっぱり否定した。
彼との関係を勘ぐられるのは拓斗に申し訳ないと思ったからだ。
家探しをしたいのだが、審査に時間がかかり、火災保険が下りるのは少し先になるということで、しばらく拓斗のところに身を寄せることになっている。
保険金が出る前に、引っ越しするのはきつかったから、拓斗の好意には感謝しかない。
一見クールな印象の彼はとんでもなく面倒見がいいようだ。
本人は気になっていることを放置するのは気持ちが悪いと言っていたが、そう感じること自体、人がいいのだと思う。
「でも、あんなセキュリティばっちりだったら、もうストーカーに狙われても大丈夫だな」
「やめてくださいよ、縁起でもない」
望晴は顔をしかめた。
啓介は望晴が大学を中退せざるを得なくなったストーカーのことを言っているのだ。
やたらと望晴を拓斗とくっつけようとしてくる啓介は、彼なりに彼女の将来を案じているのだろう。
大学の同級生にストーカーされた結果、彼女は不安障害になったのだ。
学校に通えないどころか、男性まで怖くなってしまった。特に、若い男性に対しては、恐怖心から声が出なくなった。
幸い、心理カウンセリングを受けるうちに、日常生活に支障がないくらい回復したけれど。
『東京に店を出すから、そこで働いてみないか』
従兄の啓介が声をかけてくれたのはそんな時だった。
ストーカーから遠く離れた東京なら安心できると思ったし、いつまでも親のすねをかじっているわけにはいかないと、望晴はそれを受けたのだ。
結果は大正解で、めきめきと元気になり、彼女は本来の調子を取り戻した。
それでも、男性恐怖症は完全には治っていなかったが。
「悪い。思い出させてしまって」
瞳を翳らせた望晴を見て、啓介が謝る。
「大丈夫です」
嫌な記憶を振り払うように、望晴はかぶりを振った。