かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
「お客様、Lサイズだと幅が広すぎで、お身体に合わないものもございます。それにお客様の肌色とそこのマネキンの服の色味は合わないと思いますので、新たに選ばせていただけると有り難く存じます」
 ここで働き始めて五年。望晴にもプライドがあった。
 少しも服に興味がなさそうな拓斗だったが、それを許容して、適当なものを売るのは嫌だった。
 マネキンが着ているものはイエベ用に考えたものだ。総額二十万円近くになるので、店長がわくわくしている姿が目に入ったけど、拓斗はどう見てもブルベだから似合わない。
 人にはパーソナルカラーというものがあって、肌色、瞳の色などによって似合う色似合わない色があるのだ。
「買ってから合わなくて買い直すのもお金と時間の無駄だと思われます。まずは採寸させていただいたほうが後の時間の短縮になるかと」
 望晴は丁寧に、しかし、きっぱり言った。
 拓斗は意外という顔で、しげしげと望晴を見直す。
 望晴はピンクがかった白い肌に黒目がちの大きな瞳で、髪をシニヨンにまとめているので、上品でおっとりしているように見られがちだが、意志ははっきり示すほうだ。
 納得したようで、拓斗はうなずいた。
「なるほど、それは合理的だ。では、手早く測ってくれ」
「かしこまりました」
 望晴はポケットからメジャーを取り出し、拓斗のサイズを測った。
 手が震えそうになるのを抑えながら。
(もういい加減慣れてもいいのに)
 溜め息をつきそうになるのを堪え、手を動かす。
 時間を惜しむ彼を待たせないように、望晴は採寸しながら、頭をフル回転させ、拓斗に似合いそうな服を思い浮かべた。
 在庫は頭に入っている。
(着やすいものがいいと言ってたから、ジョーゼットジョガーパンツはどうかしら? チャコールグレーにしたら……)
 コーディネートを考え出すと、手の震えも止まってきて、楽しくなってくる。
 サイズを測り終えると、拓斗をソファーに座らせて、望晴は店内のあちこちから服や小物を持ってきた。
 あっという間に、台の上に二種類のコーディネートが揃う。
(よし、十五分に収まったんじゃない?)
 満足げに望晴は時計を見た。
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