かりそめ婚のはずなのに、旦那様が甘すぎて困ります ~せっかちな社長は、最短ルートで最愛を囲う~
 翌日、お店へのお土産をはるやで買った望晴は拓斗とともに帰京した。
 帰りがけに夕食をとって、マンションに戻る。
 荷物を下ろすと、ふっと彼を意識した。

(結婚、しちゃったんだ……)

 拓斗と目が合う。
 しばし見つめ合ったあと、拓斗が視線を緩めた。

「これからよろしく、奥さん」

 ボッと頬が燃えて、望晴はそれを隠すように頭を下げた。

「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ちょうどいいから、それは虫よけにつけておけば?」

 望晴の左手に視線を落として拓斗が言う。
 そこにはきらめく婚約指輪があった。
 入江対策ということだろう。
 気にしてくれている彼に感謝しつつ、うなずいた。
 望晴が指輪に気を取られていると、いきなり拓斗が顔を近づけてくる。

「で、初夜はどうする?」

 彼女はボンッと真っ赤になった。切れ長の目が彼女を覗き込んできて、色気が滴るようだ。

「し、初夜って……!」

 慌てふためく望晴の頬を、ククッと笑った拓斗がなでた。

「入籍して初めての夜だから、初夜だろう?」

 そう言って、拓斗は望晴の腰を引き寄せた。
 彼の腕に包まれる。
 彼の体温を感じる。

(温かい……)

 広い胸に顔をうずめた望晴は、心臓が爆発しそうになった。でも、心地よさも感じる。

「あ、でも、疲れてるか……」

 身を離そうとした拓斗の背中に、望晴は腕を回した。もう一度、彼の熱を感じたくて。

「いいえ」

 そうつぶやくと、顎を持ち上げられ、キスされた。
 最初は触れるだけのものだったのに、だんだん深くなっていき、舌を絡められる。
 不埒な手が胸を揉み始める。

「ふ、ぅ……んっ……」

 服の上からでも先端を擦られると、快感が走って、身をくねらせてしまう。
 彼女のくびれをなぞった拓斗の手が、スカートをまくりあげて、腿をなでてきた。
 きわどいところに触れられて、ごくりと唾を飲む。

「ベッドに行こう」

 口を離した拓斗はそうささやき、望晴の手を引いた。
 甘く触れられて、望晴は蕩ける。
 そうして初夜は更けていった。

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