本日、初恋の幼なじみと初夜を迎えます。~国際弁護士は滾る熱情で生真面目妻を陥落させる~
「本当に? そう思ってくれているのか?」

 視線をさ迷わせた後思い切ってうなずくと、「ありがとう」とうれしそうな声がした。

 ゆっくりと顔を上げると思った通り、優しげに微笑む彼と目が合った。けれどいつもとどこか違う。濡れたように光る瞳の奥でなにかが揺らめいている。じっと見つめていると、まぶたに触れるだけの口づけが落とされた。

「キス、してもいいか?」

 許可を求められ、返事にためらう。ふたりとも布切れ一枚しか身に着けていない浴槽の中でキスをするのは、普通のときよりとても淫らな気がする。イエスともノーとも言えずにいると、彼が眉を下げた。

「嫌ならいいんだ」

 寂しげな微笑みにハッとした。バーラウンジでの〝仲直り〟で私はスッキリ終わったつもりでいたけど、彼は違っていたのかもしれない。それほど深く彼を傷つけてしまったのだと思ったら、胸が苦しくなる。

 彼の頬にそっと手を添えた。

「嫌じゃないわ」

 瞠目した彼の瞳をじっと見つめ、まぶたを下ろす。
 柔らかな感触が唇に降ってきた。

 最初はゆっくりと。様子をうかがうように薄く触れ合わせるだけ。
 離れていく気配にまぶたを上げたら、間近で目が合った。あえて逸らさずにじっと見つめ返すと、一瞬だけくっついてすぐに離れる。
 もう一度目を閉じた。

 静かに呼吸をしながらじっと待つ。心臓の音がドキドキとうるさい。

 三度目に息を吸ったとき、唇に温もりが重なった。
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