エイプリルフールなんだから

side 勇真

 さあ、今だ。言うんだ。美結に、好きだって。
 俺の頭の中にあったのは、美結に告白したい、それだけだった。それなのに俺は全くのヘタレ馬鹿野郎で、勇気が出せないのだ。クソ、誰が勇真だ。勇気なし真の方がいいんじゃないか。
 そんなときに、今日はエイプリルフールだと思い出した。さっき美結に、うちの学校廃校になるんだよといわれ、一瞬騙されそうになったっけ。
 その時俺は、ひらめいてしまった。告白せずに、美結の気持ちを確かめる方法を。それはずるくてサイテーの方法だったけど、それしかなかったし、許されてもいい気がした。だって今日は、エイプリルフールなんだから。

「そうだ俺、彼女出来たんだ」

 美結がタピオカを見つめるのに飽きて俺の顔に目を向けたタイミングで、俺は言った。美結はぽとりとカップを落とした。でもすぐに、舞台上に立つ自信に満ちた美結の顔に戻った。俺が恋をした、俺とは正反対の美結の顔。

「そうなんだ。先越されちゃったな~、お前に彼女出来るとか信じられないわ。まあとりあえず良かったね、おめでとう」

 それがあまりにも自然な表情だったので、俺は無性に泣きたくなった。これが美結からの答えだ。美結はちっともがっかりしたり、寂しがったりしなかった。俺のことは、好きでも何でもなかったのだ。
「あはは、良いだろ! ネットで知り合ったんだけどさあ、可愛いんだよ」
 笑ってごまかす。嘘が下手な俺だけど、良かった、バレていないみたいだ。
 焦って告白したりしなくてよかったと思った。最後まで俺は、プライドだけ高いままなのだ。こんなやつのこと、美結が好きになるはずもないか……。

 それからどうでもいい会話をした後、美結は帰っていった。きっと俺と二人の時間がつまらなかったに違いない。美結から誘われたときは、飛び上がるほど嬉しかったけど、結局勘違いだったのだ。
 俺は一人、カフェの机につっぷして泣いた。馬鹿みたいだと思った。
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