濁った僕を抱きしめて
俺のことは気にしないで逃げて欲しいと、俺のことは捨てて良いからと。


分かっていた。


それは璃恋の望む選択ではない。
璃恋が喜んで選ぶような選択肢ではないと、もう分かっていた。


だって、好きだから。


好きな人の、もう半年ほど一緒に過ごした人の考えは簡単に読める。
俺だって辛いさ。


この先の道には幸と呼べるようなものは何一つない。


追われて、捕まって、死ぬしかない。
それが嫌なら自分で命を投げ出すしかない。


だから璃恋を突き放そうとしたのに。


「どんなに辛くてもいい。苦しくてもいいから、拓海くんと一緒にいたいんです」
「いっそのこと、拓海くんになら殺されたって良いんです」


どうやら璃恋は、俺より強かったみたいだ。


愛する人のためなら何だってする。
愛する人になら殺されたって良い。


俺もそうだ。
璃恋のためならなんだってするし、璃恋になら殺されたって良い。
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