濁った僕を抱きしめて
寝坊するほど安心していた、ということなのだろうか。


「……初めてだなあ、誰かと朝ごはんなんて食べんの」


凍っていた心が、璃恋の手によって生み出された温もりに溶かされていく。


気を抜くと溶けた心の破片が溢れてしまいそうで、スプーンを握ってカレーを口に入れた。
縮んでいた胃に急に物を入れたのと辛さとでむせる。


「大丈夫ですか」


璃恋が背中をさすってくれる。
伝わってくる璃恋の体温が心地よかった。


「拓海くん」


璃恋が名前を呼んでくれている。
耳元で、俺に言い聞かせるように。何度も、何度も。


分かっているのに、どうもその声だけが遠い。
俺だけ水の泡の中に閉じ込められたような感覚がする。


息が荒くなる。
脳裏に昔の姿がちらつく。


璃恋は何度も、俺の名前を呼び続けている。
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