結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 チラッとジョシュア殿下を横目で見ると、殿下は私とは逆方向に顔を向けていた。
 その不自然な顔の角度に、思わず声をかけてしまう。


「あの、殿下。どうかされましたか?」

「いや。別に」


 ジョシュア殿下はこちらを見ないまま答えた。
 殿下の視線の先には夜空しかないはずなので、何か気になるものを見ているわけではなさそうだ。


「空に何かありましたか?」

「……星が綺麗だと思っただけだ」

「…………」



 星が綺麗?
 あの殿下からそんな言葉が出るなんて……。



 心の中で失礼なことを考えていると、まだこちらに後頭部を見せたままの殿下がボソッと呟くように尋ねてきた。


「セアラ。やっぱりこのジャケットを羽織れ」

「え? でも、会場の中をその格好で歩くのはちょっと……。何か理由でも?」

「今のままだと、その……いろいろと視界に入って困るんだが」
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