結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

 まったく……なんの前触れもなくトユン事務官の前でも言うんだもの。
 もしトユン事務官の口が軽かったら、変な噂になっていた可能性もあるというのに。
 


「殿下は、それほどまでに妃候補の方を決めたくないのでしょうか?」


 トユン事務官が困ったように眉を下げた。
 とても冷徹事務官と呼ばれているなんて思えないほどに優しい顔だ。
 

「それはわかりません。決めたくないのか、ただ私に嫌がらせをしたいだけなのか……」

「そうですか。……あの、実は昨日マーガレット殿下に叱られてしまいまして」
 
「マーガレット殿下に?」


 頭の中に、いつも元気で思い込みの激しい王女の姿が浮かぶ。
 
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