結婚相手を見つけるため秘書官を辞めたいです 〜なのに腹黒王子が「好きだ」なんて言って邪魔してくるのですが!?〜

「誰かしら?」


 私の乗った馬車はその手前で止まり、男性がこちらを向いた。
 暗いためよく見えないが、騎士の格好をしているように見える。

 私が馬車から降りるなり、その男性はペコリと頭を下げた。


「あの……どちら様でしょう……か……」



 えっ!?



 質問が途中で途切れてしまったのは、顔を上げた男性に見覚えがあったからだ。

 目が隠れるほどの黒くて長い前髪。
 微笑むこともなく、口を真っ直ぐに閉じたままの無愛想な表情。
 私の初恋だった男の子によく似ている。



 誰? まさか、あの男の子……!?
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