どうやら私、蓮くんに愛されているようです
蓮は、恵那の前ではただの " 何でも屋" だ。
初めて言葉を交わしたに日に、思わず口を衝いて出た。
恵那は詮索することもなかった。

RYUSHOホールディングスでは、グループ会社を統括する部長職にあり、経営戦略のためにあらゆることに携わる。ある意味、何でも屋だ。嘘をついているわけではない。

恵那の部屋に住み始め、同じマンションの2階に空きがあることを知りすぐに契約した。
そこには、スーツやネクタイ、靴といった仕事で必要なものを運び入れた。所謂書斎のようなものだ。

毎朝ラフな格好で恵那の部屋を出て、そのまま2階の書斎行き、スーツに着替え出社する。
仕事を終え、書斎で着替えを済ませてから恵那の部屋に戻る。

そうやって、恵那との飾らない愛しい毎日を守ってきた。

恵那を、柳楽家だからこそ起こり得る様々な出来事に巻き込みたくなかった。
何より、ようやく見つけた自分の居場所、そして恵那との生活を壊したくなかった。
全ては自分のエゴだ。

だがもう、限界かもしれない。恵那の表情から笑顔がなくなってしまう前に全てを終わらせなければならない。
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