どうやら私、蓮くんに愛されているようです
「早速ですが、弊社にはどういったご用件で?」

「単刀直入に申し上げます。弊社を、御社の傘下におさめてはいただけないでしょうか?」

「それはまた大それたことを仰いますね。自分の会社を売り飛ばすということですよ」

「はい」

「それは御社の意向ですか?」

「いいえ、私の独断です」

「そんなことをすれば、あなた自身が大きな代償を払うことになるのでは?」

「覚悟の上です」

「何故そこまでして傘下に入ることを望まれるのでしょうか?」

「このままでは、ルクススペイが崩壊してしまうと危惧したからです。弊社は、月島前社長が全てをかけて作り上げた会社です。その会社を守る。それが私の使命だからです」

「使命、ですか?」

「はい」   

「いったい何が貴女をそこまで突き動かすのでしょうか?」

「お恥ずかしい話、私には離婚歴かまあります。パート勤だった私は、子供の親権も取られ、何もかも失いました。途方に暮れていた私に手を差し伸べてくれたのが月島社長です。私が今生きているのは月島社長のおかげです。ですので、私は私の全てをかけてでもルクススペイを守りたいのです」

「弊社を選ばれた理由は?」
 
美奈子はすうっと、浅く長い息を吐いた。
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