心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 いつもと同じ時間に、イザベラが馬車で出かけていく。
 息子の友人が来ていようが、イザベラが母として挨拶に来ることはない。

 グレイの家庭事情をなんとなく感じ取っているのか、レオは母について何も触れてはこなかった。

 
「よし、行くぞ」

「えーー……大丈夫なの? 本当に……」


 ブツブツ不満を言いながらも、レオは暗い庭の中をグレイの後について走ってくる。
 別邸の扉を開けると、中は相変わらず薄暗くて静まり返っていた。


「ほ、ほら。誰もいないじゃないか。帰ろう」

「…………」

「待ってよグレイ!!」


 グレイが無視してスタスタ歩き進めると、レオが仕方なさそうに追いかけてくる。

 半泣き状態のレオを連れて2階1番奥の部屋に入ると、いつも通り……檻の中には眼帯をつけたマリアが座っていた。
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