心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「いたっ!! また怪我したらどうするんだよ!」

「安心しろ。マリアがいるから大丈夫だ」

「あとで治ったとしても、蹴られた時は痛いんだからね!」

「お前が余計なことを言うからだ」


 正直に答えたことで、グレイが怒ったらどうしよう……と心配していたマリアは、2人のやりとりを見て心から安心していた。

 こんな温かな空気を感じたのはいつ以来……いや、あっただろうか。

 自然にマリアは笑顔になっていたらしい。
 マリアを見た2人が、驚いて喧嘩をピタリと止めた。


「笑った……」

「かわいーー!」


 グレイと少年がマジマジと顔を近づけて見てきたので、マリアはすんっと真顔に戻った。
 自分が笑っていたことに気づかなかった。

 いつもエマやイザベラから「本当に笑わない子ね」と言われていたことを思い出す。

 今、自分は笑えていたのか、とマリアは嬉しく思った。
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