心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
22 傷だらけのマリア
イザベラの部屋に向かおうとしていたグレイに、ガイルが鍵を差し出してきた。
別邸の鍵である。
「お前、あの女の部屋から取ってきたのか?」
「まさか。執事長である私が、盗みなど行いませんよ。これは別邸の合鍵でございます」
合鍵があったのかと、グレイは心の中で軽くショックを受けた。
その発想のなかった自分を恥ずかしく思う。
「……そうか。では、行くぞ」
イザベラがすでに家を出ていることは確認済みであった。
グレイ、レオ、ガイルの3人は、少し小走り気味に別邸へと向かった。
月の全くない夜は屋敷の中は真っ暗である。
室内に入るなり、ガイルは持ってきていたランプをつけて、グレイやレオの足元を照らしてくれる。
こんなランプ、さっき持っていたか? とグレイとレオは不思議に思った。