心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
 その日から、今まで全く興味がなかったイザベラの行動を、グレイは少しずつ観察するようになっていた。
 自室の窓から見える別邸に、1日に何度も視線を向けている。

 観察するようになって気づいたことだが、別邸には毎日馬車に乗った貴族が訪れていた。

 全員同時ではなく、1組ごとだ。
 同じ時間に重なり合うことはない。訪れた者同士が鉢合わせしないよう、調整されているのだと思われる。

 貴族達は、全員が大人ではなくそれこそ赤ん坊から老人……中にはペットのような動物を連れて来る者までいた。
 しかも毎日違う顔ぶれである。


「一体別邸の中(あそこ)で何をしているんだ?」



 あの子どもに会わせているのか? なんのために?



 そんなことを考えていると、また馬車が敷地内に入り別邸の前で停まったのが見えた。
 待っていたのか、ピッタリのタイミングで別邸からイザベラの執事が出てくる。

 ジュード卿がいた頃からずっと働いている、中老の執事だ。グレイは今までに会話どころか挨拶すらしたことがない。



 あのネズミのような顔をした執事も、もちろん監禁のことを知っているんだろうな。



 グレイはチッと舌打ちをした。
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