心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 なぜ言ってしまうんだ!?
 今はマリアは檻から出ているのだし、なんとか誤魔化す方法もあったはずだ。

 このままではイザベラは捕まり、不逞を行った罪で爵位も剥奪、マリアも奪われてしまう!



 グレイと同じことを考えたのだろう。
 騎士団長の隣に立っていた騎士が、ニヤリと笑って口を挟んだ。


「それならば、密告内容は全て事実というわけですね。イザベラ婦人とキーズという男を連行いたします。もちろん……聖女様も」


 皆の視線が、またマリアに戻った。
 ずっと寝たフリをしているマリアが、ぎゅっとグレイの服の裾をつかんだ。

 周りからは死角になっている部分なので、騎士達には気づかれていない。

 隣に立っているレオも、無意識にグレイに近づいて肩をくっつけてきた。
 口を出さないようにしているが、きっとこの状況に怯えているのだろう。
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