心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは手紙をぐしゃぐしゃにして破り捨ててやりたい欲に駆られたが、なんとか我慢した。
 少し力を入れてしまったので、持っている部分の紙がクシャ……と折れ曲がったくらいだろうか。

 グレイは怒りを抑えながらできるだけ落ち着いた声で話し出した。


「……手紙の内容はともかく、一度王宮へ来るように招待状が入っていた。聖女として王と会うのは避けることはできないから、行かなくてはならないな」

「マリア1人で行くの?」

「まさか。俺も一緒に行く。……俺も王宮に呼ばれているからな」


 グレイの答えを聞いてマリアはホッと胸を撫で下ろした。



 マリアを1人で行かせるわけがない。
 あいつらの目的はマリアを王宮で保護することだからな。



 そう考えていたグレイの頭の中には、母であるイザベラの顔が浮かんでいた。
 王宮側はイザベラの監禁の件を理由にこちらを脅してくるだろう、とグレイは想定している。
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