心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

38 マリアとエドワード王子


 国王から突然出た『婚約者』という言葉にグレイの表情が一変した。

 あまりグレイを知らない人から見たら、特に変化はないように思えるかもしれない。
 無表情には変わりないからである。

 しかしその表情はグレイがとても怒っている時のものだとマリアはわかっていた。



 お……お兄様、怒ってる?
 王様と王妃様はあんなに笑顔なのに……。
 どうしたんだろう?



 マリアは不思議に思っていたが、この場で直接聞くことはできない。
 黙ってしまったグレイを、国王は楽しそうな顔で眺めている。

 
「……マリアはまだ7歳なので婚約者を決める予定はございません。それに本人の意思が1番重要ですので、()()()()()()()()()()()()()勝手に決めることは致しません」


 グレイが少し怒りを込めたような口調でそう答えると、国王はニヤッと笑った。
 グレイが了承しないと最初からわかっていたようである。
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