心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
怒鳴りあっているわけでもないのに、なぜかマリアはグレイとエドワード王子が喧嘩しているように感じていた。
無言のまま睨み合っている2人を交互に見ていると、執事がいつの間にか近くにまで来ていた。
「お帰りになられるのですか? 陛下がぜひ一緒にお食事をと、席を設けておりますが」
「悪いがマリアはまだ外の世界に慣れていないのだ。今日はこのくらいで失礼すると陛下にお伝え願いたい」
「左様でございますか。承知いたしました。そうお伝えしておきます」
グレイと執事の会話を黙って聞いていたエドワード王子が、ガタッと勢いよく椅子から立ち上がる。
「マリア! 俺が呼んだらまた来いよ!」
ずっと『お前』と呼んでいたエドワード王子が初めて『マリア』と呼んだ。
マリアは名前を呼んでもらったことが嬉しかったが、グレイの顔が険しくなったのがわかったので小さく「はい……。わかりました」とだけ返事をした。
しかしこの返事が気に障った王子は、それをマリアに問い詰める。