心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

41 そのキスの意味は?


 睨み合っているグレイとエドワード王子の緊迫した様子にマリアが困っていると、ガイルがグレイのすぐ近くにまでやってきて声をかけた。
 
 グレイが視線を外したことで、ピリピリとした空気が少しだけ緩む。


「グレイ様。馬車の準備ができております」

「わかった。ではこれで失礼します、エドワード殿下」


 グレイは王子にそう挨拶をするなり、マリアを抱えたままクルッと踵を返した。
 マリアとエドワード王子の目がパチッと合う。

 王子はぶすっとした顔で、すぐに歩き出そうとしたグレイを引き止めた。


「マリアにもきちんと挨拶をさせろ」

「……わかりました」


 グレイは面倒くさそうな顔を隠そうともせず、小さく返事をしたあと渋々とマリアを下におろした。
 ガイルや王宮の使用人たちが皆3人の様子を遠巻きに眺めている。


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