心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイが怒っているかどうか考えていたマリアは、ハッ! と聞きたいことがあったのを思い出した。
 扉をチラリと見てまだエミリーが来ないことを確認すると、小声でレオに話しかける。


「……あのね、レオに聞きたいことがあるの」

「……なに?」


 誰もいないというのに、なぜかレオまで小声でコソコソと話している。
 マリアは自分の左手をチラッと見てから、レオに質問をした。


「ミアのキス……って、なあに?」

「えっ!? ミアのキス!? だ、誰にされたの!? まさかグレイ!?」


 レオは小声で話すのを忘れたのか、急に大声を出して慌てだした。
 あまりのレオの慌てように、マリアも焦りながら答える。


「ち、ちがうよ! エドワード様にされたんだけど、お兄様もガイルさんもエミリーも誰も教えてくれなくて……」


 それを聞いたレオは、何かを察したように「ああ……そういうことか」と呟いた。
 そしてホッと安心したのもつかの間、レオは身体を前のめりにしてマリアに顔を近づけると、再度慌てだした。

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