心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア、ダンスはだいぶ踊れるようになったか?」
「はい。セレモニーまでにはなんとか踊れそうです」
マリアが小さく両手でガッツポーズをしながら答える。
ダンスという言葉を聞いて、エドワード王子がピクッと反応した。
その王子の反応には気づかないフリをして、グレイは質問を続ける。
「そうか。では、そのセレモニーでマリアは誰とダンスを踊るんだ?」
「え?」
その質問がグレイの口から発せられた瞬間、ここにいる者全員が耳を傾けた。
和やかなムードが一転。今はまた先ほどとは違う緊張感が漂っている。
(マリア様はエドワード王子と答えるのか!? 答えないのか!?)
不謹慎ではあるが、誰もがマリアの答えに興味津々の様子だ。
全員の視線が自分に向けられていることに、マリアは気づいていない。
質問してきたグレイの顔をジッと真っ直ぐに見つめている。
グレイは普段通りのクールな表情のままマリアを見つめ返し、エドワード王子は期待に顔を輝かせながらマリアを凝視し、使用人達はどんな答えが出るのかとワクワクしながらその様子を眺めている。
マリアは少し考えたのち、頬を赤く染めモジモジしながら遠慮がちに言った。