心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
48 無自覚な気持ち
部屋に取り残されたマリアは、少し気まずそうな顔でエドワード王子を見つめた。
こちらからの挨拶は既にしてあるし、とくにマリアから話しかけるような話題もないためどうしたらいいのかわからない。
マリアが困っていると、ずっと黙っていた王子がやっとマリアのほうを向いた。
頬の赤い王子は、不機嫌そうな態度で声をかけてくる。
「……久しぶりだな」
「あ、はい。お久しぶりです?」
「今日いきなり来て迷惑だったか?」
「? いえ、迷惑じゃないです」
マリアの言葉を聞いて王子は安心したらしく、口元が嬉しそうに緩んでいる。
しかし緩んだのも一瞬で、また不機嫌な顔つきに戻るとジロッとマリアを睨んだ。
「だから! 敬語は使うなって言っただろ!?」
「あ……はい……じゃなくて、うん」
マリアが手を口元に当てながら上目遣いで答えると、王子は「うっ」と顔を赤くして悔しそうな表情をした。
視線をマリアから外し、ボソッとつぶやく。
「わかればいいんだよ……」
エドワード王子の態度に、マリアは今の状況が不思議で仕方なかった。