心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは思わず自分がバカな人間にでもなった気がした。
 これ以上ガイルに質問することに躊躇してしまう。


「な、なんだ、その目は」

「グレイ様はもう少し、女性のお気持ち……いえ、恋心というものを勉強されたほうがよろしいですな」

「…………」


 60歳を過ぎた白髪の無表情執事から『恋心』という単語が出てきたことに、グレイの顔は引きつっている。

 さらにはその勉強を勧められている。
 グレイよりもガイルのほうが優っていると言われているようなものだ。



 俺がこの老人よりも女心や恋心がわかっていないと言うのか?
 ……確かにそんなことを考えたことはないが、認めたくはない。



「……と、とりあえず、この件は保留でいい」

「そうですね。グレイ様がお勉強されてからまた考えるといたしましょう」

「お勉強って言うな」


 グレイは言葉にならないモヤモヤを抱えながらこの話を終わらせることにした。
 
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