心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 イザベラから解放されて、1番身近にいた俺と結婚できないことを寂しく感じてしまっただけだ。
 たいした傷ではないだろう。日々の忙しいレッスンに追われて、すでに頭から消えている可能性だってある。
 大丈夫だ。



 そんな思い込みから、グレイはマリアに何も説明することなく日々を過ごしていた。

 グレイがマリアの不自然さに気づいたのは、エドワード王子が来てから数日たった頃である。



 マリアに避けられている……?



 そうグレイが感じたのは、しばらくマリアと一緒に食事をしていないことが理由の1つだった。
 グレイの仕事が忙しく断ることもあるが、最近ではマリアの都合で時間が合わないことが多い。


「マリア様はすでに夕食を召し上がりました。今は教養のお勉強中でございます」


 グレイが夕食の席に着くなり、ガイルにそう報告される。
 いつもそうだ。事前に言われず、グレイが席に着いてから事後報告されるのである。

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