心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「あいつ、なぜその話をそんなに気にするんだ。俺が誰かと結婚することが不安なのか? 王子に言われた通り、自分が邪魔になると本気で思ってるのか?」

「…………」

「邪魔扱いされるのが不安だから俺と結婚するって言ったのだと思うが、それができないことをまだ気にしているとは……」

「…………」


 無言のガイルから『違う!!』と言っているような空気が出ているが、何が正解なのかわからない。
 グレイはカップをテーブルに置き、椅子から立ち上がった。

 こうなったら本人と直接話してみるしかない。


「マリアの部屋に行ってくる。少しくらい勉強を中断しても大丈夫だろう」

「かしこまりました。ですがその前に、1冊でも恋愛小説を読んでから行かれたほうが……」

「そんな時間はない。大丈夫だ」

「そうですか。……どうかマリア様を傷つけないようお願いしますね」

「俺がマリアを傷つける訳ないだろ」

「…………」


 不安そうなガイルにそう言い切ると、グレイはマリアの部屋へ向かった。
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