心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
カッとなったグレイを見て、ガイルは無言になった。
かまわず睨みつけていると、グレイからは死角になっていたガイルの脇からスッとある物が出てきた。
「!?」
それは執務室に放置されていた恋愛小説である。
タイトルの『初恋が芽生えた皇太子は幼馴染の令嬢を溺愛する』という文字を見て、グレイはゾッと背筋が凍ったような気がした。
ガイルは無言のままその小説をグレイに押し付けてくる。
「な、なんだ。俺は読まないぞ、こんな本」
拒否しているというのに全く退かないガイルの無言の圧に、とうとうグレイが折れた。
諦めたように本を受け取ると、ガイルは満足した顔で「それでは失礼いたします」と言ってスタスタ歩いていってしまった。
「なんなんだ……」
1人残されたグレイは、恋愛小説を持ったまま呆然とその場に立ち尽くしていた。