心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「このドレス、聖女っぽくないですか? ダメでしたか?」

「…………」


 なんで王子が不機嫌になっているのかわからない。
 せっかくルシアンが作ってくれたドレスなのに、ダメだと怒られてしまったらどうしよう……そうマリアが不安になっている時、部屋にいるメイド達は心の中で必死に王子をフォローしていた。


(違うんです、聖女様! 殿下のそのお顔は、照れた顔を必死に誤魔化そうとしている顔なんです!)
(聖女様があまりに可愛いから、その照れた顔を表に出さないように頑張ってるだけなんです!)
(口を開いたらニヤついてしまうから、質問にお答えできないだけなんです!)


 そんなメイド達の心の叫びは、もちろんマリアには伝わっていない。
 泣きそうなマリアの様子を見てメイド達がオロオロと慌て始めた時、エドワード王子の執事が遅れて部屋にやってきた。


「エドワード殿下、少しお待ちくださいとお伝えしたはずなのになぜ…………ん?」


 執事は部屋に入るなり、涙目のマリアを見てすぐに足を止めた。
 そしてエドワード王子の顔を確認し、メイド達に無言のまま視線を送る。
 憔悴していたメイド達は、同じく黙ったままコクコクと必死に頷いている。

 執事とメイドのアイコンタクトの意味を知らないマリアは、もう一度だけ王子に話しかけてみようと顔を上げた。
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