心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なんて美しい……!」
「綺麗……!」


 そんな恍惚した声が聞こえてくる。

 陛下や王子達、そしてマリアが上からその光のカケラの行方を見守っていると、国民の体に触れた光のカケラはポツポツと所々で輝き出す。

 マリアが治癒の力を使っている時と同じ輝きだ。
 ──光っている範囲は小さいけれど。


「マリア嬢、あの光はもしかして……」


 そう陛下が言いかけた時、下からまたわぁっと歓声が上がった。
 今度は子どもではなく、大人──いや。老人や、包帯を巻いているような怪我人がぴょんぴょんと飛び跳ねているのが見える。

 その様子を見た陛下が、ニヤッと笑いながら小さく言葉を続けた。


「……聖女の力を降らせたのかな?」

「そう……みたいです」


 そんな意思のなかったマリアは、遠慮がちに答えた。

 自分の意思とは関係なく、しかも離れた場所にいる人たちに治癒の力を届けることができるなんて、マリア自身も知らなかった。
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