心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

59 そこにいたのは……


 出し方がわからない。
 そう答えていいのか、マリアは迷っていた。

 こんなに期待されているというのに、なんの努力もせずチャレンジすらせず、すぐに拒否していいものか。
 まずはやってみたほうがいいのではないか。


「わ、わかりました」

「!! ありがとうございます!」


 マリアがそう返事をすると、執事はパァッと顔を輝かせた。
 そして服のポケットから小瓶を取り出し、いつ光のカケラが出ても入手できるよう、キリッと集中した顔つきになる。



 だ、大丈夫かな? とりあえず、やってみよう!



 マリアは両手を前に伸ばし、治癒をする時と同じように手元に集中した。
 美しい黄金の光が手を包み、その場で明るく輝き出す。

 しかし光はマリアの手から離れず、空に散らない。



 えいっ! えいっ!



 頭の中では飛ばそうと努力しているのだが、光は一向にマリアの手から離れない。
 その内、光はシュウゥゥ……と小さくなり消えてしまった。
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