心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「でもこんなに早く離れてくれて良かったよ。さすが、グレイの感じの悪さは最上級だね!」
「褒めてるつもりか?」
「褒めてるさ。だって、普通ならベティーナをこんなにあっさりと追い返したりなんかできないし」
とても褒められている気分にはなれないが、レオの輝いた瞳を見る限り、彼が本気で言っているのだというのは伝わってくる。
複雑な気持ちになりながらも、グレイはレオに問いかけた。
「あの女はなんなんだ? 何が言いたかったのか、さっぱりだ」
「彼女はグレイの婚約者になりたいんだよ。学園でもかなり人気があるし、落とす自信があったんだと思うよ」
その言葉を聞いたグレイが心底不快そうな顔をしたので、レオは思わず吹き出してしまいそうになった。
あのベティーナから好意を向けられて、ここまで嫌そうな顔をするのはグレイくらいのものだろう。
「なんとも面倒な女だな」
「まぁ彼女はしつこいし、多分これで諦めてはいないと思うけど……」
「学園で会ったら『お前と婚約する気などないから近寄るな』って伝えておけ」
「言えるわけないだろ!?」
真っ青になったレオを見て、グレイはチッと心の中で舌打ちをした。
自分が誰かの婚約者候補になっていることに嫌悪しながら、グレイはできるだけ女性の少ない場所に移動することにした。