心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

7 エマとジュード卿


 突然現れたジュードと名乗った紳士は、エマを自身の馬車へと案内した。

 外から見るよりも広く、向かい合わせになるよう設置された椅子は、触らずとも高級そうなのがわかる。
 このような高級な生地の椅子に自分が座っていいものかと、エマは迷っていた。


「どうぞ、お掛けください。今従者に食事の調達を頼みましたので、ゆっくりしてください」

「あ……は、はい」


 食事という言葉にエマは反応した。ここ数日、まともな食事などしていなかったのである。
 エマは赤ん坊を抱いたまま、フカフカの椅子に腰掛けた。


「突然声をおかけしてすみません。貴女の横を通り過ぎた時に、たまたま見えてしまったものですから」


 ジュード卿の言葉に、エマは一瞬期待をしてしまった。
 この紳士は、自分のことを見初めてくれたのかもしれない……と。

 しかし次に続いたジュード卿の言葉を聞いて、エマは真っ青になった。
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